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ファンタはなぜ見かけない?一度取った「棚」が薄れる理由

コンビニの棚でも自販機でも、最近ファンタを手に取った記憶が、すぐには出てきませんでした。

なくなったのだろうか、と一瞬思いました。ですが、調べてみるとそんなことはありません。ファンタは今も現役で、新商品も出続けています。それなのに、見かけないと感じる。この感覚のズレの中に、ポジショニングを考えるうえで大事なことが隠れていると思われます。前回はサントリーのNOPEを題材に「話題になることと、定着することは別だ」という話をしました。今回はその続きとして、一度取った棚が薄れていくとはどういうことかを、ファンタから考えてみます。

ファンタは終わっていない──今も出続け、マクドナルドにも並ぶ

まず事実を確認します。ファンタは2026年4月13日に、基幹の「ファンタ グレープ」「ファンタ オレンジ」をAI活用でリニューアル発売しています。「ファンタ学園」シリーズのCMも継続中です(日本コカ・コーラ公式リリース)。期間限定フレーバーも、白桃や早摘みレモン、フルーツパンチなど、毎年いくつも出ています(日本食糧新聞)。日本での発売は1958年で、フルーツ炭酸というカテゴリーを長く担ってきたブランドです(日本コカ・コーラ お客様相談室)。

外食の現場でも生きています。マクドナルドのドリンクには「ファンタグレープ」「ファンタメロン」が入っており、グランドサイズ対象の7種は「コカ・コーラ/コカ・コーラ ゼロ/スプライト/ファンタグレープ/ファンタメロン/Qoo白ぶどう/爽健美茶」です(マクドナルド公式ニュースファンタ グレープ 製品ページ)。つまりファンタは、消えたわけではありません。むしろ定番の棚に、今も座っています。

それでも私たちが「見かけない」と感じるのは、なぜなのでしょうか。

では、なぜ見かけないと感じるのか

理由の一つは、フルーツ炭酸というカテゴリーそのものが縮んでいることです。これはブランドの持ち主である日本コカ・コーラ自身が認めています。2024年には5年ぶりに味とパッケージを刷新し、ブランドメッセージを「#好きにやってよし」に変えるなど、若年層向けのテコ入れを続けています(日経クロストレンド)。清涼飲料の国内市場全体も、少子高齢化と健康志向を背景に縮小傾向で、無糖や低カロリーへのシフトが進んでいます(帝国データバンク 業界動向)。

もう一つは、ファンタが得意としてきた自販機というチャネルの縮小です。自販機の販売数量はこの10年で約24%減ったとされ、報道によれば、コカ・コーラ系のボトラーは2025年12月期に自販機事業で881億円の減損を計上し、最終損益見通しを485億円の赤字へ下方修正しています(Fujisan Trends(報道まとめ))。ファンタは自販機やティーンとの接点が強いブランドですから、カテゴリー縮小と自販機縮小が重なると、目に入る回数は体感で大きく減ります。

ここから先は私の推測ですが、コンビニやスーパーの棚も、無糖飲料や新商品に面積を取られ、定番フルーツ炭酸の露出が細っているのだと思われます。ブランドが消えたのではなく、接触の機会が減った。これが「見かけない」の正体に近いと考えます。

「カテゴライズされる」とは、定番の棚に名前が挙がること

ここで少し抽象化してみます。ある商品が頭の中でカテゴライズされている、とはどういう状態でしょうか。

わかりやすい目印は、マクドナルドやフードコートのドリンクです。「飲み物といえば?」と聞かれて挙がる顔ぶれ──コーラ、コーヒー、お茶(烏龍茶)、オレンジジュース。これらは、その場で説明されなくても、誰もが型として思い浮かべられる定番の棚です。ファンタは、この中に「フルーツ炭酸」という型で入っていました。マクドナルドにファンタグレープやメロンが並んでいるのは、その証拠です。頭の中に型として棚があると、外食の場でも無意識に選ばれます。これが、カテゴライズされている、ということだと思われます。

では、NOPEはどうでしょうか。ここは正直に切り分ける必要があります。マクドナルドの飲料はコカ・コーラ系で占められているため、サントリーのNOPEはそもそも物理的に並べません。ですから「マクドナルドにあるか」は、頭の中の型だけでなく流通の契約も混ざった話で、そのままNOPEの評価には使えません。

より本質的なのは、NOPEがどの型にも収まらないという点です。コーラとも、フルーツ炭酸とも、お茶とも言い切れない。前回も触れたとおり、飲んだ人の多くは「グレープ味のコーラ」と表現しますが(107 Design note)、その一方で「何味か掴めない」という声も同じだけあります。型として名前が挙がりにくいのです。定番の棚は、まず型として思い浮かべてもらえることが前提ですから、どの型にも入らない商品は、そこに残りにくいのではないでしょうか。

ちなみに、いっそNOPEはフルーツ炭酸という型を狙えばよかったのでは、という見方もあります。味の方向からすれば、そのほうが型に乗れたのかもしれません。ただ、フルーツ炭酸は縮んでいる棚で、しかもファンタという先行者がいます。新しい型を立てるか、既存の型で先行者に挑むか。どちらも難所であることは、頭に置いておく必要があると思われます。

面白いCMと、飲みたくさせるCMは別

もう一つ、ファンタを見ていて感じることがあります。CMの話です。

ファンタ学園のCMは、コミカルで話題になりました。私も面白いと思って見ています。ただ、冷静に見ると、あのCMは面白いけれど「ファンタを飲みたい」という気持ちを作っているかというと、そこは別のように感じます。たとえば、体を動かした後にファンタを飲んで爽快になる、というような描き方なら、飲む理由がまっすぐ伝わります。話題になることと、飲みたい理由を作ることは、必ずしも同じではないのではないでしょうか。

念のため補足すると、あのCMの狙いは、味の訴求よりも、若い世代との親しみや認知の維持にあるのかもしれません。ですから、これはCMの出来を否定する話ではありません。私が言いたいのは、話題性と「選ばれる理由」は別の設計だ、ということです。

棚を取ること、取り続けること、選ばれる理由をつくることは、別

ここまでを整理すると、三つのことが見えてきます。棚を取ること、取り続けること、選ばれる理由をつくることは、それぞれ別だ、ということです。

ファンタは、フルーツ炭酸という型を一度取りました。ここはたしかに勝ち取ったのです。ですが、取り続けるには、カテゴリーが縮み、接触点が減っていく中でも、目に入り続ける工夫が要ります。さらにその上で、手に取ってもらうには「飲みたい理由」がなければなりません。話題や露出は、この三つ目を自動的には作ってくれません。NOPEの初速と、ファンタの現在は、正反対のようでいて、同じ一本の線の上にあると思われます。片方は「取ったが、定着はこれから」、もう片方は「取ったが、取り続ける難しさに直面している」。

オウンドメディアに置き換えると──上位を取った後こそ、接触を絶やさない

この話は、自社メディアの運用にそのまま当てはまります。

検索で一度上位を取っても、更新と接触をやめれば、順位も想起も少しずつ落ちていきます。一本の記事が跳ねても、読者の頭の中に「この分野ならこのメディア」という定番の棚が残らなければ、次に選んでもらえる保証はありません。大事なのは、取った後も接触を絶やさないことと、読者にとっての「飲みたい理由」、つまり読み続ける理由を作り続けることだと思われます。ライバルはいずれ現れますが、同じ立ち位置で接触を続けられる会社はほとんどありません。続けること自体が、そのまま参入障壁になります。

まとめ

ファンタは終わっていません。それでも見かけないと感じるのは、一度取った棚も、接触が減れば頭の中で薄れていくからだと思われます。棚を取ることと、取り続けること、そして選ばれる理由をつくることは、別の仕事です。

自社メディアで本当に効いてくるのも、一度の話題や順位ではなく、その位置を保ち続けられるかどうかです。検索順位だけでなく、顧客の頭の中にポジションを作る。そして、その場所を守り続ける。私たちが大切にしているのは、まずその一点です。

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