正直に言うと、その順位表を見たとき、少しほっとしました。ここ1年ほど「AIに引用されたいなら必須だ」と紹介されてきた施策が、23項目の最下位に置かれていたからです。
その施策は llms.txt という、AI向けにサイトの要点を書き出しておく専用ファイルです。順位表を作ったのは、SEOの実験を年に何十本と回しているCyrus Shepard氏。過去2年ぶんの「AIにどう引用されるか」に関する研究・実験・特許のうち、使えるもの54件を集め、引用に効く要因を23個に整理して、証拠の強さで0〜10点の点数をつけたものです。2026年5月に公開されました。ChatGPT・Gemini・PerplexityといったAI検索を対象にした、いまのところ最も網羅的なまとめだと思われます。
まず、その23要因を点数順に並べたものをそのまま載せます。
| 要因 | スコア | 証拠の強さ |
|---|---|---|
| URLのアクセス可能性(クロールできるか) | 9.5 | 強い |
| 検索順位 | 9.4 | 強い |
| ファンアウト順位(関連サブクエリでの順位) | 9.3 | 強い |
| プレビュー制御(スニペット表示を許可する) | 9.2 | 強い |
| クエリと回答の一致 | 9.2 | 強い |
| 意図と形式の一致(例:比較記事) | 9.0 | 強い |
| トピッククラスターでの上位 | 8.9 | 中程度 |
| 結論を冒頭に置く | 8.8 | 中程度 |
| 抽出しやすい構造(見出し・表) | 8.6 | 中程度 |
| 具体的な事実・数値 | 8.3 | 中程度 |
| 言い切りの表現(曖昧にしない) | 8.1 | 中程度 |
| 出典を明記する | 8.0 | 中程度 |
| 単独で完結する文 | 8.0 | 中程度 |
| 本文がHTMLで見える(隠さない) | 7.6 | 中程度 |
| 情報の鮮度 | 7.0 | 中程度 |
| ブランド・エンティティの信頼 | 6.8 | 中程度 |
| 文章の長さ | 6.7 | 中程度 |
| 言語の一致 | 6.3 | 中程度 |
| 名称の一貫性 | 5.8 | 弱い |
| 構造化データ(スキーマ) | 5.6 | 弱い |
| 既知のURL(学習済み) | 5.4 | 弱い |
| ドメインオーソリティ | 5.0 | 弱い |
| llms.txt ファイル | 2.0 | 弱い |
先に一つだけ、大事な前提を共有させてください。Shepard氏自身が「これは相関であって因果ではない」「従来の意味でのランキング要因ではない」と念を押しています。つまり「点数の高い順に手を打てば必ず引用される」という話ではありません。あくまで、複数の研究で繰り返し観測された特徴を、証拠の強さで並べ直したものだと捉えるのが正確です。
「AI専用の裏技」は、最下位でした
最下位の llms.txt から見ていきます。これは2024年ごろに提案された仕組みで、AIに読ませる用の要約ファイルをサイトに置いておく、というものです。「AI時代の新常識」といった文脈で、ずいぶん紹介されました。
ところが今回の集計では2.0点。Shepard氏は、引用に影響するという信頼できる証拠は見つからなかった、としています。GoogleもAI Overviewを出すためにこの専用ファイルを求めてはいませんし、OpenAIが案内しているのもクローラーの制御であって、この仕組みではありません。使ってはいけないという話ではなく、ここに戦略の中心を置くのは筋が良くない、ということだと思われます。
私がほっとしたのは、この一点に尽きます。新しい言葉やツールが出てくるたびに飛びつくのではなく、地道な部分を積んできた側が、結局は報われる構図に見えたからです。
効いていたのは、結局「検索の土台」でした
では上位に何が並んでいたか。1位から順に、URLがクロールできるか(9.5)、Googleでの検索順位(9.4)、ファンアウト順位(9.3)、スニペット表示を許可しているか(9.2)、そしてクエリと回答の意味的な一致(9.2)でした。
眺めていて気づくのは、上位のほとんどが「AI専用の何か」ではなく、従来のSEOの延長だという点です。AIはまず、たどり着けるページ・すでに検索で評価されているページ・質問にきちんと合っているページを引用しています。実際、AhrefsによればGoogleのAI Overviewに引用されるページの38%は検索上位10位以内から来ています。これは2025年半ばの76%から下がった数字で、順位だけで決まるわけではなくなってきてはいますが、土台としての検索順位が効いていることは変わりません。
Google自身も、2026年5月に公開した公式ガイドで、AEO(回答エンジン最適化)もGEO(生成AI最適化)も、Googleから見れば検索体験の最適化、つまりSEOだと明言しています。同じガイドは、llms.txtやAI向けの特別なマークアップは用意しなくてよい、とも述べています。AI対策とSEOは別物ではなく、地続きだと考えるのが実態に近いのでしょう。
出典:Optimizing your website for generative AI features on Google Search(Google Search Central、2026年5月)2024年、プリンストンの研究はすでに近いことを言っていた
この流れは、実は新しい発見ではありません。2024年にKDDという学会で発表されたプリンストン大学らの研究(1万件の検索クエリで検証したもの)が、すでに近いことを示していました。9つの施策を試し、効いたものと効かなかったものが、はっきり分かれています。
| 施策 | 結果 |
|---|---|
| 統計・数値を加える(Statistics Addition) | 効果が大きい(最上位グループ) |
| 引用を加える(Quotation Addition) | 効果が大きい(最上位グループ) |
| 出典を示す(Cite Sources) | 効果が大きい(最上位グループ) |
| 文章を流暢にする(Fluency Optimization) | 有意に向上(10〜20%) |
| 平易にする(Easy-to-Understand) | 有意に向上(10〜20%) |
| 権威ある語り口にする(Authoritative) | 有意な向上は見られず |
| キーワードの詰め込み(Keyword Stuffing) | ほとんど効果なし |
| 独自の言い回しを増やす(Unique Words) | 強い効果としては挙げられていない |
| 専門用語を増やす(Technical Terms) | 強い効果としては挙げられていない |
効いた施策のうち、統計・引用・出典を加えたものが最も効果的でした。論文全体では最大で約40%の可視性向上、実在の生成エンジンPerplexity.aiでも最大37%の改善が報告されています。効いた5つと効かなかった4つの分かれ方が、この研究の見どころです。
出典:GEO: Generative Engine Optimization(Aggarwal et al., KDD 2024)興味深いのは、効かなかった側です。キーワードの詰め込みはほとんど効きませんでした。そして、「もっと権威的で説得力のある書き方にすれば有利になるはずだ」という予想に反して、権威づけた語り口にも有意な差は出ませんでした。論文は、生成エンジンはこうした演出にすでにある程度強い、と述べています。効いたのは、演出ではなく、統計や出典で中身の信頼性を上げることでした。読者を煽って言葉を盛るより、事実と数字を静かに置いていく。私が普段から記事で心がけていることと、そのまま重なります。
自社サイトだけでは、引用されない
もう一つ、外せない軸があります。自社サイトの中身をどれだけ磨いても、それだけでは足りない、という点です。
2025年に公開された大規模な実験研究では、生成AIの検索が、自社サイトやSNSよりも第三者の報道・専門メディア(アーンドメディア)を、系統的かつ強く優先することが示されています。ChatGPTやClaudeでは、家電や自動車に関する質問への引用の9割以上が第三者メディアからだった、という報告もあります。
出典:Generative Engine Optimization: How to Dominate AI Search(Chen et al., arXiv、2025年9月)Ahrefsが7.5万ブランドを調べた分析では、ブランドがウェブ上でどれだけ言及されているかがAI Overviewの露出と0.664で相関したのに対し、被リンクの数は0.218にとどまりました。他サイトで話題にされていること自体が、被リンクよりも強く効いていた、ということです。引用元の内訳を見ても、BuzzStreamの400万件分析ではブログやコンテンツ記事が53.46%を占め、企業のプレスリリースはわずか0.04%でした。
出典:What Actually Gets You Cited in AI Search(Digital Applied、2026年6月、Ahrefs・BuzzStream等の分析を整理)しかも、AIごとに引用元がまるで違います。6.8億件を調べた分析では、ChatGPTとPerplexityで引用されるドメインが重なるのは11%だけでした。片方で引用されても、もう片方では姿が見えない、ということが普通に起きます。だからこそ、自社サイト一本ではなく、他の場所でも名前が出ている状態を、時間をかけて作っておく必要があるのだと思われます。
出典:Averiによる6.8億件のAI引用分析(AuthorityTech)出回っている数字ほど、出どころを確かめる
ここで一つ、正直に書いておきたいことがあります。この手の話題では、出どころのあいまいな数字がそのまま独り歩きしがちです。
たとえば「新しいコンテンツはAI検索で4.3倍引用される」という数字。よく見かけるのですが、私が一次にあたって調べたかぎり、この4.3倍を裏づける調査の原典にはたどり着けませんでした。Seer Interactiveの数字として紹介している記事もありましたが、Seer本体の公開データには見当たりません。出どころの確認できない数字です。
確かなのは、鮮度は効くけれども、効き方は中程度だということです。先ほどのZyppyの一覧でも、鮮度のスコアは7.0で、上位のクロール可否や検索順位ほど強くはありませんでした。
数字が大きいほど記事は目を引きますが、確認できない数字を使えば、いずれ信頼をまるごと失います。ここは面倒でも、一次にあたって、確かめられる範囲で語る。私が記事で守りたいのは、この部分です。
引用されることに、どんな意味があるのか
ここまでは「どうすれば引用されるか」の話でした。では、引用されると何が変わるのでしょうか。
Seer Interactiveが53ブランド・547万クエリ・24.3億インプレッションを分析した2026年の調査では、GoogleのAI Overviewに引用されたブランドは、引用されなかった場合に比べて、1インプレッションあたりの自然クリックが120%多かったとされています。ただしSeer自身が、引用がクリックを増やした原因だと断定はできない、もともと信頼のあるブランドが引用されやすいだけかもしれない、と注記しています。因果ではなく相関として受け止めるのが正確でしょう。それでも、引用される側とされない側で、目に見える差が生まれていることは確かなようです。
出典:AIO Impact on Google CTR: 2026 Update(Seer Interactive、2026年4月)順位ではなく、「思い出される場所」を作る
23の要因を並べ直して見えてくるのは、拍子抜けするほど地味な結論です。AI専用の裏技はほとんど効かない。効いていたのは、たどり着けること・検索で評価されていること・質問に合っていること・他の場所でも語られていること。そして、それを続けていること。
これは、私がずっと大事にしてきた考え方とそのまま重なります。新しい入り口が増えても、やることの本質は変わりません。特定の分野で「この話ならこのサイト」と、人にもAIにも思い出してもらえる場所を、地道に積み上げていく。順位という一時的な位置ではなく、頭の中の定位置を取りにいく。
AIに引用されるかどうかも、突き詰めればこの延長線上にあるのだと思われます。検索順位だけでなく、顧客の頭の中にポジションを作る。そこができていれば、入り口がGoogleであれChatGPTであれ、選ばれる側に回っていけるのではないでしょうか。










