デベロッパーに頼める仕事が、なくなりました。
25年間、手を替え品を替えWebサイトを作ってきた私の話です。自分でゼロからサイトを作るときは、ページビルダーの導入を前提に骨組みまでは自分で組み、どうしてもできない要素だけデベロッパーに依頼する。1回ごとの依頼は高くつくので、ミニマムで月7万円、10万円といった形で契約する。それが長年の私のやり方でした。ところが契約の最後のほうは、本当に、依頼する仕事が見つからなくなっていたのです。
ライターとの契約も同じでした。AIが出てきてから、依頼ができなくなった。AIのほうがはるかに正確で、良い構成案とストーリーを作ってしまうからです。本当は依頼したい気持ちもあるし、予算が取れないわけでもありません。しかし、クライアントにその費用対効果を報告できない。AIのおかげで、と言うべきか、AIのせいで、と言うべきか。
この変化を目の当たりにして、湧いてくる問いがあります。Elementorのようなページビルダーは、もう不要になるのでしょうか。
結論を先に言うと、道具としてのページビルダーがすぐ消えることはなさそうです。ただし「作れること」の価値は、確実にゼロへ向かっています。だとすれば、価値はどこへ移るのか。25年の道具遍歴と、2026年のデータから考えてみます。
AIがサイトの「箱」を1日で作った話
いま私がやっている工程を、具体的に書きます。
まず、GPTの画像生成(image2)でトップページのデザイン案を作ってもらいます。LPだけでなく、企業の公式サイトやメディアサイトのトップまで、想像以上のクオリティで出てきます。かつてはこのラフ案の段階でデザイナーにお金を払い、さらにラフ案を実際のサイトにするまでに大きな費用と時間がかかっていました。その両方が、置き換わったわけです。
次に、そのデザイン画像をGPTやClaudeに渡して、HTMLに落とし込んでもらいます。出てきたHTMLを、WordPressテーマ(私の場合はSWELL)のトップページにカスタムHTMLブロックで入れる。すると、デザイン案にかなり近い形で、見事に表示されます。修正したいときもAI側に文脈が残っているので、「ここをこう変えて」という依頼と出力の往復が、ある程度狙った形で回ります。
ただし、正確に書いておきます。1日でできるのは、この「箱」までです。実際にサイト本体へ差し込む段階では、テーマに合わせた調整や中身の作り込みが必要で、そこには日数がかかります。魔法のように完成品が出てくるわけではありません。少なくとも現状の私の力では。。。
それでも決定的に変わったのは、その日数の過ごし方です。以前はつまずくたびに、デベロッパーへ指示書を書き、依頼し、返事を待っていました。いまは「この用途でおすすめのプラグインはどれか」と聞けばAIが答えてくれますし、なんなら「プラグインは不要です。functions.phpにこのコードを差し込めばOKですよ」という回答まで返ってきます。以前の私にとって、functions.phpを触るのは怖いことでした(今でも怖いですが)。その怖い作業をAIが横で手伝ってくれて、仮にエラーが出ても、問題点を見つけ出して改善案まで教えてくれる。このフィードバックの速さは、他人に聞くのとは比べものになりません。こうなると、デベロッパーよりもAIを頼りにしてしまいますよね。
もちろん、完全に狙いどおりにいかないこともあります。ただ、それはデザイナーやデベロッパーに依頼していたときも同じでした。伝わらない、直らない、往復が増える。そこにかかるストレスが同じなら、コストがほぼゼロで返事が最速のAIに頼るほうが、実務としてはだいぶ得だと感じています。
セキュリティ面も、本来は専門家のサポートが望ましい領域です。しかし小規模なサイトの段階でその費用を出すのは現実的に難しく、実際にはAIに解決方法を聞くことで済んでしまうケースが多い。月々の保守契約という言葉は、これからますます懐疑的に見られていくのではないでしょうか。少なくとも私は、月7万円ぶんの依頼を、もう作り出せそうにありません。
テンプレートに縛られていた25年
この変化の大きさは、「以前がどうだったか」を知らないと伝わりません。私のサイト制作歴を少しさかのぼります。
最初はHTMLの手書きでした。フッターの文言をひとつ直すだけで、全ページを開いて修正し、FTPで転送し、プレビューを確認する。短い1箇所の変更にも数分かかり、それがページ数ぶん積み重なる。アフィリエイトに打ち込んでいた頃は、HTMLサイトを量産できる「シリウス」というツールが画期的で、私もドメインを取りまくって50サイト、100サイトと作っていました。現在も後継版のSIRIUS2が販売されているロングセラーです。ただ、量産はできてもカスタマイズはほぼできない。「こう見せたい」というアイディアがあっても、HTMLやCSS、JavaScriptを理解していなければ手も足も出ませんでした。
出典:SIRIUS2公式サイトやがてWordPressの時代が来ますが、今度はテンプレートに縛られる時代が始まります。オリジナルのデザインを作れる人は高い費用を取るので、私たちはテンプレありきでサイトを設計するしかない。ところが、見た目が良さそうなテンプレを選んでも、実際にサイトにしてみると「なんか決まらない」ということが度々起きるのです。
海外のテンプレは、洗練された最先端のデザインが豊富にあります。しかし日本語フォントで組むと印象が変わり、英語圏のテンプレは記事のHタグ装飾がやたらシンプルなことが多いので、CSSで装飾を足す必要がある。カスタマーサポートも英語です。かといって日本語のテンプレは、そもそも数が少なく、使い勝手やデザインに難のあるものも多い。ブログ用のテンプレをメディアサイトや公式サイトらしく見せるには、かなりのカスタマイズと、そのデザイン案を考える労力が必要でした。多少デザインに不満があっても、テンプレを使わざるを得なかったのです。
こうして並べると、はっきりした法則が見えます。
| 時代 | 楽になったこと | それでも残った作業・壁 |
|---|---|---|
| HTML手書き | (出発点) | 1箇所の修正で全ページ更新。1変更に数分×ページ数 |
| シリウス | HTMLサイトの量産(50〜100サイト規模) | カスタマイズの壁。HTML/CSS/JavaScriptの知識が必須 |
| WordPress+テンプレ | 記事更新の手軽さ | テンプレの品質に縛られる。海外製は日本語の壁、国産は選択肢の少なさ |
| ページビルダー | ノーコードでのデザイン | 操作の習熟、動作の重さ。細部はデベロッパーに月7万〜10万円 |
| AI(2026年〜) | デザイン案から実装まで一気通貫、外注費ほぼゼロ | 何を作るか・どこで戦うかの判断 |
新しい道具が出るたびに、「作る作業」のどこかが消えてきました。表のいちばん右の列を上から下へ見てください。作業と知識とお金の壁が一段ずつ取り払われ、最後に残ったのは、作業ではなく判断です。
ページビルダーは不要になるのか?
すぐには不要になりません。データがそれを示しています。
意外に思われるかもしれませんが、Elementorのシェアはいまも伸びています。W3Techsの2026年7月14日時点の計測では、Elementorは全Webサイトの13.0%で使われており、CMSが特定できるサイトに限れば18.6%を占めます。WordPress自体が全サイトの41.5%ですから、WordPressサイトのおよそ3本に1本がElementorという計算です。
出典:W3Techs「Usage Statistics and Market Share of Elementor」(2026年7月14日時点)推移で見ても同じです。W3Techsの履歴データをまとめた2026年6月の集計レポートによると、WordPressサイトに占めるElementorの比率は2025年5月の28.1%から2026年5月には31.2%へ増加しています。一方、古参ビルダーのWPBakeryは9.3%から7.8%へ減少しました。ビルダー同士の入れ替わりは起きていますが、ビルダーというカテゴリー自体はまだ拡大している、ということだと思われます。
出典:techtide solutions「WordPress Usage Statistics 2026」(2026年6月・W3Techs履歴データの集計)これは冷静に考えれば自然なことです。AIでサイトを作れる人は、まだ全体のごく一部にすぎません。新しい技術が「使える状態」になることと、大衆に「行き渡る」ことの間には、いつも数年のタイムラグがあります。
ただし、AIが最初に切り崩しているのがどの層かを考えると、のんびりはしていられません。それは私のような、「テンプレに不満を持ちながらも、使わざるを得なかった層」です。デザインへのこだわりと発注経験があり、外注費の相場も知っている。この層から順に、AIへ移っていきます。シェアの数字が変わるより先に、お金の流れが変わるのです。
LovableのARR5億ドルが示すものは何か?
「作れること」の値段が暴落している、ということです。
Lovableとは、2023年後半にストックホルムで創業した、自然言語の指示だけでWebサイトやアプリを作れるAIプラットフォームです。こうした作り方はバイブコーディングと呼ばれています。TechCrunchの報道によると、LovableのARR(年間経常収益)は2025年7月に1億ドル、11月に2億ドル、2026年1月に3億ドル、2月に4億ドルと、加速しながら増えました。2月は1か月で1億ドル増、それを従業員146人でやってのけています。
出典:TechCrunch「Lovable says it added $100M in revenue last month alone, with just 146 employees」(2026年3月11日)、TechCrunch「As Lovable hits $200M ARR」(2025年11月19日)さらに2026年6月の発表では、年換算収益は5億ドルに達し、新規プロジェクトの作成は週100万件、累計では5,000万件を超えたとしています。同社によれば、ユーザーの中心は非エンジニア層です。同じ月には、Forbesが評価額120億ドルでの資金調達交渉を報じました。
出典:TechCrunch「Lovable says it has hit $500M in annualized revenue」(2026年6月9日)、Forbes「AI Coding Startup Lovable In Talks To Raise Funding At A $12 Billion Valuation」(2026年6月5日)週100万件という数字が意味することは、ひとつです。コードを書けない人たちの手から、新しいサイトが1週間に100万件も生まれている。だとすれば、「きれいなサイトを持っていること」自体は、もう差別化になりません。デザインの整ったサイトは、誰の記憶にも残らないほどありふれたものになっていきます。
2026年時点の状況を1枚にまとめると、こうなります。
| 項目 | 数字 | 時点 |
|---|---|---|
| Elementorのシェア(全Webサイト比) | 13.0% | 2026年7月(W3Techs) |
| Elementorのシェア(WordPress内) | 28.1%→31.2%へ増加 | 2025年5月→2026年5月 |
| LovableのARR | 約5億ドル | 2026年6月(同社発表) |
| Lovableの新規プロジェクト | 週100万件 | 2026年6月(同社発表) |
既存の道具はまだ伸びている。しかしその足元で、新しいサイトが週100万件ずつ増えている。作りの良さで差がつかなくなるのは、時間の問題だと思われます。
作りで差がつかないなら、何で差がつくのか?
シリウスで50サイト、100サイトと量産していた頃の話が、この問いへのヒントになります。
当時、当たったサイトと死んだサイトを分けたのは、デザインでも記事の本数でもありませんでした。狙ったキーワードの難易度です。ライバルが少なく、弱く、それでいて検索ボリュームがあるワードを狙えたサイトは、あっさり上位表示しました。1サイトあたり10記事、20記事もあれば十分という見立てです。内容の改善は、上がってきたサイトにだけ後から施す。どこが当たるかは正直やってみないとわからないので、うまくいったサイトだけを続け、うまくいかなかったサイトはサテライトサイトに回す。当時はそういうピラミッド構想が主流でした。
つまり、作りの質がほぼ同じ条件で数十サイトを並走させた結果、成果を分けたのは「どこに建てたか」だけだった。これは私にとって、実地で確かめた実験結果のようなものです。
セブ島留学のメディアでも、同じことをより意識的にやりました。いちばん時間をかけたのはデザインでも記事でもなく、見極めです。「フィリピン留学」という大きなキーワードではなく、「セブ島留学」という絞ったキーワードに勝ち筋があると読めた。この読みが当たったからこそ、半年で検索TOP3に入り、その後の成果につながりました。
そしてAIは、この構図を全員に適用します。新しいサイトが週100万件生まれる時代には、誰のサイトも「作りの質ではほぼ差がつかない」という、かつて私が量産で体験した実験条件に置かれるからです。技術の知識そのもので活躍してきた人よりも、「どうやって情報を届けるか」を考え抜く人のほうが価値を生む。Lovableのユーザーの中心が非エンジニア層だという事実は、その表れではないでしょうか。
だからこそ、あなたに確かめてほしいことは、2つだけです。そのキーワードは実際に検索されているか。そして、その検索結果に並ぶ相手に勝てるか。この2つの見極めに、これまで制作に割いていた時間と予算を移す。箱はあとからAIが1日で建ててくれます。
まとめ:箱は1日で建つ。問題は「どこに建てるか」
ページビルダーは、当面なくなりません。W3Techsの2026年のデータが示すとおり、Elementorのシェアはむしろ伸びています。しかしLovableの週100万プロジェクトが示すとおり、作りの良さで差がつく時代は終わりつつあります。
HTML、シリウス、テンプレート、ページビルダー。25年間、道具が変わるたびに、作業と知識とお金の壁がひとつずつ消え、価値は上流へ移ってきました。デベロッパーに頼める仕事がなくなった今、残っているのは「どの市場で、どのキーワードで戦うか」という判断だけです。ここだけは、どの道具も代わりにやってくれませんでした。
サイトの箱は、1日で建つ時代になりました。問題は、どこに建てるかです。正しい場所に建てて、続ける。検索順位だけでなく、顧客の頭の中にポジションを作る。それがこれからのWeb集客の本丸だと、私は考えています。
なお、生成AIとWeb制作の分野は現在進行形で大きく変化しています。本記事で引用したデータには取得時点を明記しましたが、内容は現時点における方向性の一つの判断材料としてお読みください。













