Skip to main content Scroll Top
  • Home
  • ブログ
  • ドトールの倍の値段でも潰れない。珈琲館に学ぶ選ばれる理由

ドトールの倍の値段でも潰れない。珈琲館に学ぶ選ばれる理由

コーヒー一杯が、となりにある安いカフェの倍ちかい値段でした。それでもその店は、私が知っているだけで30年以上、ずっと同じ場所で潰れずに続いています。

私が地元で長く通っている、珈琲館の話です。安いドトールやヴィ・ド・フランスがすぐ近くにあって、値段だけ並べたら完全に負けている。なのに、いつ行ってもそれなりに席が埋まっている。正直に言うと、私はこの「高いのに、続いている」がずっと不思議でした。今回はこの違和感を、ポジショニングという視点でほどいてみたいと思います。Web集客の仕事をしている人間にとって、ここには大きなヒントが隠れていると思うからです。

スタバは「遊園地」だ、と私は思っている

先に、私が普段カフェをどう見ているかを正直に書きます。

スターバックスを味で評価する人は、たぶんあまりいません。あの店が売っているのは、コーヒーや食事そのものというより、「スターバックスにいる」という体験のほうだからです。言ってみれば、遊園地に近いと思っています。遊園地のレストランの料理を、味で星をつける人はいません。そこにいること自体が楽しいから、それでいいわけです。これは皮肉のようでいて、私はけっこう本気でうまくできた商売だと思っています。味ではなく「その場にいる気分」を商品にして、ブランドだけで成立させている。これはこれで、見事に一つの棚を取っています。

だからこそ大事な点があります。珈琲館は、スタバとは戦っていません。遊び場が違うのです。

ドトールはまた別です。あそこは「安さと速さ」に最適化された店だと思います。一杯が手頃で、駅前や駅ナカで人が多い。その代わり、席は詰まっていて、長くはいられない。私の体感だと一時間が限界です。これも立派な一つの棚で、珈琲館とは目指しているものが違います。

コメダは「ファミレス×高級コーヒー」。では珈琲館は?

ここで本題です。

カフェ業界で先頭を走っているのは、スターバックス・ドトール・コメダの3強だと言われます(出典1)。その中でコメダは、よく「ファミレス×高級コーヒー」と評されます。サンダルでも入れる気安さ、いつまでも居られる心地よさ、ボリュームのある食事。空いていた「食事+くつろぎ」のポジションに、ちょうどうまく入った、という整理です(出典8)。つまりコメダが売っているのは、コーヒーそのものというより「場所と時間」です。星乃珈琲店も、方向としては近い。

私もコメダや星乃は嫌いではありません。珈琲とランチでちょうどいいし、席もきちんと確保されている。ただ、感覚としてはファミレスに近くて、「珈琲を飲みに行った」という気持ちにはあまりならない。場所が主役だからだと思います。

では、珈琲館は何屋なのでしょうか。ここがずっと、私自身うまく言葉にできずにいたところでした。

ルノアールは「席」に、珈琲館は「一杯」に払わせている

答えのきっかけは、別の店との比較で見つかりました。喫茶室ルノアールです。

ルノアールは、珈琲館と同じく落ち着いて過ごせる、高めの喫茶店です。一見すると近い。でも、ルノアールに入ると私はいつも「席のためにお金を払っているな」と感じます。商談で使うにはとても良い。あの落ち着きと空間に払っているわけです。

そこで気づきました。同じ「高め」でも、何に払っているかが違う。ルノアールは席・空間に、スタバはブランドに、コメダは食事と場所に払わせている。珈琲館だけが、コーヒーそのものに払わせているのです。

私の頭の中にあったモヤモヤを、軸にして並べ直すと、こうなりました。縦軸が「落ち着けるか/せわしないか」、横軸が「空間で選ばれるか/一杯で選ばれるか」です。

この図で見ると、「落ち着ける」かつ「一杯で選ばれる」という右上の場所に、日常使いできる店としては珈琲館がほとんど一つだけ立っています。高級ホテルのラウンジも一杯で勝負していますが、あれは価格もサービスも別格で、毎日は行けない非日常です。昔ながらの個人経営の純喫茶が本来ここにいたのですが、フルサービス型の喫茶店は一度大きく数を減らしました(出典7)。その空いた棚を、チェーンの規模で押さえているのが珈琲館だ、と私は読んでいます。

珈琲館は「席代」でも「ブランド代」でもなく、「一杯」に払う喫茶店。これが、私なりの答えです。

注文を受けてから挽く——「一杯」を売っている証拠

これは私の感覚だけの話ではなく、店のつくりにもはっきり出ています。

珈琲館では、豆を11種類から選べます。しかも、多くのチェーンが豆をあらかじめ挽いておくのに対して、珈琲館は注文が入ってから豆を挽き、一杯ずつ淹れています(出典1)。創業は1970年、神田神保町の専修大学前に開いた「専大前本店」が始まりで(出典4)、炭火焙煎やサイフォンにこだわってきた、もともと珈琲そのものが主役の店です(出典5)。

書いていて、自分の通う店のことで一つ思い出しました。そこはオープンスタンド型になっていて、目の前で珈琲を淹れる、豆を挽く所作が見えるのです。カウンターに座れば、香りも一緒に立ち上がってくる。これが、意外なほど居心地がいい。

つまり珈琲館が売っているのは、運ばれてくる「完成品のコーヒー」ではなく、コーヒーが一杯立ち上がっていく、その時間のほうなのだと思います。スタバが「その場にいる気分」を売っているのと同じくらい、珈琲館は「淹れられていく一杯」を売っている。売っているものが、そもそも違うのです。

高いのに、伸びている

おもしろいのは、この「高い喫茶店」が、いま静かに伸びていることです。

事実から書きます。「珈琲館」というキーワードの検索数を調べると、2023年6月時点でおよそ9万、2024年6月で13.5万、2025年から現在まで16.5万へと、3年でほぼ1.8倍になっています(自社調べ・SEMrush)。売上も、ここ数年でコロナ前のおよそ140%まで戻りました(出典1)。立て直しの中身を見ると、直営店の平均月商は400万〜450万円だったものが数年で約1.8倍、フランチャイズ店の売上も約1.4倍に上がっています(出典2)。

ここからは私の解釈です。ブランド名そのものの検索が増えているとすれば、それは「珈琲館という店が、頭の中で思い出される回数が増えてきた」ということだと思われます。検索されるから売れるのか、繁盛しているから検索されるのか、因果はどちらとも言い切れません。ただ、人の頭の中に「珈琲館」という棚ができてきている、その動き自体は確かなのではないでしょうか。立ち位置がはっきりしている店は、こうして思い出してもらえる。逆に言えば、何屋かわからない店は、そもそも検索すらされません。

同じ看板でも、続く店と続かない店がある

最後に、冒頭の「30年続いている」に戻ります。

珈琲館は、フランチャイズが大半を占めるチェーンです(出典6)。本部がすべてを握るのではなく、店ごとに運営するオーナーがいる。だから同じ看板でも、店によって接客の濃さも空気も変わります。均質さで言えばコメダのほうが上で、珈琲館は店ごとに表情が違う。これは弱点のようでいて、実は昔の街の喫茶店の手触りそのものです。実際、再建を率いた社長自身が、全国180軒以上のフランチャイズ店をめぐってオーナーの声を聞いて回っているそうです(出典3)。

私の通う店に話を戻すと、結局あの店を30年続く店にしているのは、立地でも看板でもなく、あの一杯と、淹れてくれるあの光景と、顔なじみの店員さんなのだと思います。安いドトールがすぐ近くにあっても揺るがないのは、そもそも同じ土俵に立っていないからです。値段の安さでは負けている。でも、売っているものが違う。だから客は、わざわざあの一杯のために通うのです。

あなたの会社は、どの棚で、何に払ってもらっているか

ここまで珈琲館の話をしてきましたが、私が本当に書きたかったのは、ここからです。

自社メディアやWeb集客の相談を受けるとき、私が最初に確かめるのは「今、どの市場で戦っていますか」ということです。多くの会社が、検索順位という「場所取り」だけを追いかけています。記事を増やし、広告を打ち、上位を狙う。それ自体は大事です。でも、席だけ立派にしても、何屋かわからなければ、人は思い出してくれません。

珈琲館が教えてくれるのは、その逆です。値段でも知名度でも一番ではない。それでも「一杯に払う店」という棚をはっきり持っているから、わざわざ検索され、わざわざ通われ、30年続く。大事なのは、どの棚に立ち、お客さんに何に対してお金を払ってもらうのかを、自分の言葉で決めておくことなのだと思います。

検索順位だけでなく、顧客の頭の中にポジションを作る。珈琲館のあの一杯は、それを静かに証明し続けているように、私には見えます。

参照元

(検索ボリュームは2026年6月時点のSEMrush(日本データベース)での推定値です。)

Recent Posts

Clear Filters

コーヒー一杯が、となりの安いカフェの倍ちかい。それでも珈琲館は30年続いています。スタバは「遊園地」、コメダは「ファミレス」、では珈琲館は何屋なのか。値段でも知名度でもなく「一杯」に払わせる立ち位置を、Web集客とポジショニングの視点で読み解きます。

6つのAIに同じ質問をしたら、答えが見事に割れました。検索で1位を取ってもAIに引用されない時代に、オウンドメディアで選ばれる人は何が違うのか。AI本人に勝ち方を聞いた記録から、AI検索時代の戦い方を考えます。