Skip to main content Scroll Top
  • Home
  • ブログ
  • 「顧客を絞り込め」は本当か。新宿御苑のスタバが教えてくれたこと

「顧客を絞り込め」は本当か。新宿御苑のスタバが教えてくれたこと

先日、カシオがearU(イアユー)というヒアリングアシストイヤホンを出したことを知りました。補聴器でも集音器でもない、「聞こえ」の新しい選択肢として作られた商品です。気になって調べてみると、聴力の市場が思っていたよりずっと大きいことに驚きました。

日本で難聴があると推計される人は、約1,430万人。人口のおよそ15%にあたります。ところが補聴器を実際に使っている人は約200万人前後で、難聴を自覚している人のうちの使用率は、欧米の30〜40%に対して日本は15%ほどにとどまるそうです(ニュースイッチ補聴器市場の現状まとめ)。国内の補聴器市場規模はおよそ1,200億円。困っている人は1,000万人以上いるのに、手を打てている人はごく一部。これだけのギャップがある市場だったのか、と素直に驚きました。

そうやって聴力にアンテナが立った状態で、たまたま久しぶりに新聞を広げました。すると、下のほうにある広告に、聴力関連のものが自然と目に入ってきたのです。

新聞の下段広告が10年変わらないのは、大衆に売れ続けているから

そこで、ひとつ思い出したことがあります。新聞や週刊誌の下段に載っている広告は、商品こそ違えど、入っているネタが昔からほとんど変わっていません。聴力、腰痛の解消、宝石の紹介。15年ほど前、アフィリエイトで「どんな商品を紹介して、どんなサイトを作るか」を考えていた頃、私はこの下段広告をよく読んでいました。

理由はシンプルです。10年20年変わらない広告というのは、それだけ長く売れ続けている商品だと思われるからです。10年前と同じ広告が今もあるなら、10年後も同じ広告が出ている可能性が高い。ネタを探すうえで、これほど参考になるものはありませんでした。

もうひとつ、紙の広告には大事な側面があります。良くも悪くも、新聞や週刊誌を買うのは大衆です。だからそこに載り続けている広告を見れば、大衆が何に反応するのか、どんな表現が刺さるのかがわかります。たまごクラブのような出産・子育ての雑誌なら、そこに入る広告もそれ相応の中身になる。媒体ごとに、読者の輪郭がそのまま広告に出ているわけです。改めて、リアルな紙で広告を眺めることの価値を確認しました。

正直に言うと、偏差値50以下に開いたサイトのほうが売れた

大衆にウケるかどうかは、売上を確保するうえでかなり大事です。これについては、自分でも苦い思い出というか、はっきり数字で出た経験があります。

「俺のセブ島留学」を作る前、私は複数のサイトを同時に運営していました。そのうちのいくつかでは、少しレベルの高い読者、偏差値で言えば55ぐらいを狙うような記事を作っていました。過去に読んだ本に「いい顧客をつかまえて、質の高い顧客と質の高い会話を」といった考え方が出てきて、それを真に受けていたからです。

同時に、まったく逆のサイトも作っていました。ゼロからわかるように、とにかく丁寧に説明する。言い方は悪いですが、偏差値50以下の人に向けたサイトです。紹介する商品も、そういう人が買うようなものでした。

結果から言うと、はっきりと後者のほうが売れました。しかも、販売そのものが圧倒的に楽でした。考えてみれば当たり前で、お客さんの半分は偏差値50以下なわけです。最初からちょっとレベルの高い人に絞れば、その分だけ販売は難しくなります。大きく儲けたいなら、まず誰にでも入れる窓口を用意しておく必要があるのだな、と。大きな会社が広い窓口でやっているのには、ちゃんと理由があったわけです。

「顧客は絞り込め」は本当か

マーケティングでは、よく「顧客を絞れ」「ペルソナを決めろ」と言われます。私もこれを何度もやってきました。でも実際は、自分で決めた層を狙ってやっても、それ以外の層のお客さんも普通に買ってくれるのです。

だから私は、ペルソナはイメージこそするものの、あまり信用しすぎないようにしています。「こういう人に向けた商品」と意識はする。けれど、売ってみるまで誰が来るかは本当のところわからない。狙っていなかったお客さんが、いつのまにか一番のファンになっていた、ということもよくあります。

そう考えると、ペルソナを一人に寄せて「その人にしか売れない」作り方をするのは、なかなか危ういのではないでしょうか。それは結局、自分の手で窓口を狭めているのと同じだからです。

では、何を絞ればいいのか。私は、顧客ではなくポジションだと思っています。お客さんから見て、自分がどこに立っているか。そこを「違う」と言い切れる場所に置けているか。絞り込むべきは、そちらのほうです。

新宿御苑のスタバが教えてくれる、ポジションの強さ

先日、新宿御苑に行ってきました。園内にスターバックスがあって、これがよく目立っていました。調べてみると、新宿御苑に民間企業として初めて出店した店舗で、2020年3月にオープン、中の池を見下ろす丘の上に建っています。私が歩いた範囲では、御苑の中で見かけたカフェはここだけでした。

外に5分10分も歩けば、カフェはいくらでもあります。でも、御苑の中はここしかない。だから、いまそこにいる人がどんな層かは関係なく、お茶をしたい人は自然とここに集まってきます。誰が来るかを選ぶ前に、来る理由のほうが先に成立しているわけです。

もちろん、スタバのように最初から名前が知られていれば、それに越したことはありません。けれど、独自のポジションさえ持てていれば、仮にあなたが無名のショップをここにオープンしたとしても、「ここにしかない雰囲気のカフェ」を求めて人は訪れてくれるのではないでしょうか。違う場所に立っているということは、それ自体が強い。そして何より、お客さんにとってわかりやすいのです。

エージェントでも語学学校でもない場所をつくった

セブ島留学のサイトも、まさにこれでした。当時のフィリピン留学業界には、留学エージェントのサイトか、語学学校のサイトしかありませんでした。どちらも「売る側」の都合で作られていて、現地の留学生のリアルな声を届ける場所が、ひとつもなかったのです。

そこに、どちらにも属さない「現地留学生のためのメディア」を置きました。狙ったのはそこだけで、読者のレベルは絞っていません。むしろ、誰が読んでもわかるように開いていました。それでも際立ったのは、立っている場所が他と違ったからだと思っています。

earUの作り方にも、同じ匂いを感じます。カシオの開発担当者は、これまでの聞こえをサポートする機器は高齢者向けのイメージが強く、現役で働く層が気軽に使えるものが少なかった、という趣旨のことを語っています(カシオ earU 開発秘話)。補聴器でも集音器でもない、新しい棚を自分で作りにいった商品です。約1,430万人という大きな市場に対して、年齢や見た目で身構えてしまう人にも入れるよう、入り口のほうを広げている。客層を絞ったのではなく、ポジションを定めて窓口を開いた、という順番に見えます。

顧客のセグメントに頭を悩ませる前に、まず決めるべきは「自分がどこに立っているか」だと思われます。どんなファンがつくのかは、やってみないとわからない。だからこそ、入り口は最初から狭めない。立ち位置だけははっきりさせて、あとは来てくれた人を大事にする。そのほうが、結果としてずっと遠くまで行けるのではないでしょうか。

検索順位だけでなく、顧客の頭の中にポジションを作る。

Recent Posts

Clear Filters

コーヒー一杯が、となりの安いカフェの倍ちかい。それでも珈琲館は30年続いています。スタバは「遊園地」、コメダは「ファミレス」、では珈琲館は何屋なのか。値段でも知名度でもなく「一杯」に払わせる立ち位置を、Web集客とポジショニングの視点で読み解きます。

6つのAIに同じ質問をしたら、答えが見事に割れました。検索で1位を取ってもAIに引用されない時代に、オウンドメディアで選ばれる人は何が違うのか。AI本人に勝ち方を聞いた記録から、AI検索時代の戦い方を考えます。