正直に言うと、6つのAIに同じ質問を投げたら、答えが見事に割れました。
あるサイトのタイトルを決めようとしていたときの話です。どの案が読者に届きやすく、AIにも拾われやすいか。候補をいくつか用意して、6種類のAIに同時に聞いてみました。返ってきた答えは、きれいにバラバラでした。あるAIが一番に推した案を、別のAIははっきり下のほうに置く。さらに不思議なことに、同じサービスでもモデルを変えると、推す案が変わることまでありました。
AI本人ですら、タイトル一つで意見が揃わない。だったら、いっそのこと——これからWeb集客はどこで戦えばいいのか、誰が勝つのかを、AIに正面から聞いてみよう。そう思って始めた対話が、思いのほか自分の前提を揺さぶってきました。今日はその記録です。
まず「これから勝つのはどんな人か」と聞いた
最初の問いはシンプルでした。AIで、Webに関わる人全員の生産性が上がった。資料づくりも、キーワードの整理も、画像も、裏取りも、以前なら丸一日かけていたものが数十分で形になる。だとすれば、これからはどんな人が勝つのか。
返ってきた答えは、私が少し期待していたものとは違いました。要約すると「速く、たくさん作れること、それ自体はもう勝因にならない」。理由は単純で、全員が同じだけ速くなれば、速さで得ていた差は相殺されて消えるからです。
考えてみれば、その通りでした。「手間がかかるから、続けられる人が少ない」というのは、長いあいだ立派な参入障壁でした。ところがその手間がほぼゼロに近づくと、同じことを誰でもできるようになります。つまり、正しい記事をきちんと作れることは、武器から「できて当たり前の前提条件」へと格下げされたわけです。ここは、ふだん自分が言っている「ポジションが先」という話と、きれいに重なりました。
「でも、量を作れる人が有利では」と食い下がった
ただ、ここで素直に頷くのも違う気がして、食い下がりました。量を大量に作れることは、今でも有利なのではないか、と。
返ってきたのは「半分は正しく、半分は間違い」という答えでした。落ち着いて考えると、これが腑に落ちます。いま誰でも量産できるようになったのは、どこかで読んだような解説記事、つまり中身が他と入れ替え可能なコンテンツです。そしてそれは、AIがもっとも得意とし、検索結果の中で先回りして要約してしまう種類のものでもあります。入れ替え可能な記事をいくら積んでも、AIに吸い込まれて終わってしまう。
一方で、量そのものに意味がなくなったわけではないと思います。報われるのは、AIが合成できない厚みを、続けて積んでいく量のほうです。量か質かという二択ではなく、「何の量か」という問いに変わった、ということではないでしょうか。
答えが、私の前提をひっくり返した
対話の中で、もっとも前提を揺さぶられたのはここでした。「順位を取る」という話の手前で、そもそも検索した人がサイトに来なくなっている、という指摘です。
数字を確かめると、これは実感以上に進んでいました。2026年の初め、米国ではGoogle検索のおよそ68%が、どのサイトもクリックされないまま終わっていたという調査があります(SparkToro/Similarwebのクリックストリーム分析)。2024年の約60%から、二年で大きく上がっています。検索結果のページそのものが、入口ではなく終着点になりつつある、ということです。
その引き金のひとつが、検索結果の上に出るAIの要約です。Pew Research Centerが2025年3月の実際の閲覧データを調べたところ、AIの要約が表示されたときに利用者がリンクをクリックした割合はおよそ8%。要約が出ないときの約15%と比べて、ほぼ半分でした(Pew Research Center。なおGoogleはこの調査の方法論に異議を唱えています)。同じ調査では、「〜とは」のような問いかけ型・文章型の検索ほどAIの要約が出やすいこともわかっています。つまり、定義や解説を求める情報収集系のクエリほど、AIがその場で答えてしまい、クリックが静かに消えていく。多くのオウンドメディアが量産してきたのは、まさにこの帯です。
ここで大事なのは、検索という行為が減ったわけではない、ということです。検索の回数はむしろ増えている。減っているのは、そこからサイトへ流れるクリックだけ。検索とサイト訪問が、切り離されつつあるのです。「検索で1位を取る」ことと「実際に見てもらえる」ことが、もう同じ意味ではなくなった。私がいちばん見直さなければと感じたのは、この一点でした。
「じゃあ、お客さんはどう買うのか」
次に気になったのは、消費者の動きです。かつては食べログのような中間のメディアを見て店を決める人が多かった。それがいまはAIに聞いて決める人が増えている。この変化のなかで、どうやって買うところまで進むのか。
調べてみると、購買の入口がAIへ移っているのは、もう傾向として出ていました。米国のオンライン購買者を対象にしたBainの調査では、買い物の道筋をAIで始める、あるいはAIと従来の検索を併用すると答えた人が44%にのぼっています(Bain & Company)。以前なら何度も検索して、いくつものページを見比べ、日をあらためて戻ってきて買っていた一連の流れが、AIだと一つの会話の中で完結してしまう。条件を伝えると、AIが候補を絞り、比べ、ほぼ決めてくれる。
その結果、サイトに来た時点で、すでに「これがいい」と決まっている人が届くようになります。実際、AI経由で来た訪問者は、検索経由よりも長くサイトに滞在し、より多くのページを見て、より高い率で成約したというデータもあります(Similarweb)。冷えた相手ではなく、AIに事前に選び抜かれた温かい相手が来る、ということです。
では、食べログのような中間メディアは消えるのか。私はそうではなく、役割が「決定」から「検証」へ移ったのだと考えています。AIの推薦をそのまま鵜呑みにする人ばかりではありません。ある調査では、AIのすすめを少なくとも時々は裏取りする人が86%にのぼり、確認先としてGoogleや企業の公式サイトが使われていました(Semrush)。今の道筋は、おおまかに「AIで見つけ、絞り、ほぼ決める→Googleや口コミで確かめる→サイトに来て、最後の確認をして決める」。検索や口コミは、入口ではなく、AIの推薦を確かめる関所のような場所に降りてきたのだと思います。
「では、選ばれる人は何を持っているのか」
ここまで来ると、問いは一つに絞られます。AIに選ばれ、検証にも耐える人は、何を持っているのか。対話を通して見えてきたのは、だいたい四つでした。
一つめは、検索順位ではなく、AIに引用・想起される存在であること。先ほどの調査でも、AIの答えの中で「上のほうに出てくるから目立つ」と感じる人は20%にとどまり、それより多くの人が「説明が具体的で分かりやすいかどうか」で印象を決めていました(Semrush)。順位の話と、名前で挙げてもらえるかどうかの話は、もう別のゲームになりつつあります。
二つめは、AIが合成できない一次情報を持っていること。AIは世に出ている情報を要約するのは得意ですが、まだどこにも出ていない情報は作れません。自分が現場で見た数字、固有名詞つきの実体験、自社の事例。ここはAIが先回りできない領域です。
三つめは、狭いカテゴリーの「名前」になっていること。「この条件ならどこ?」とAIが聞かれたとき、引っ張ってくるのは、AIがすでに名前として認識している相手です。狭い棚でトップの名前を取っていることの価値は、AIの時代に下がるどころか、むしろ上がっているように感じます。
四つめは、検索を経由しない直接の関係を持っていること。指名検索やメルマガのように、AIにもGoogleにも仲介されずに届く回路があるかどうか。ここは最後の砦になります。
おもしろいのは、この四つが、結局は同じ一つのことに行き着く点です。それは「比較されない名前を持っているか」。価格や条件で横並びに比べられる場所にいるかぎり、成約率も単価も削られていきます。逆に、比べられない立ち位置に立てれば、その二つは同時に上がっていく。AIに聞いても、行き着く先は昔から言われてきたポジショニングの話でした。
最後にわかったこと——いい答えを出したのは、AIではなかった
ここで、冒頭の話に戻ります。タイトル案を6つのAIに聞いたら、答えが割れた、というあの場面です。
最初は単に「面倒だな」と思っただけでした。けれど対話を終えてから振り返ると、あれはけっこう大事なことを示していた気がします。AIだからといって、共通の正しい答えを持ってきてくれるわけではない。しかも、いちばん高性能とされるモデルが推した案が、いつも正しいとも限らない。答えはAIの数だけ、モデルの数だけ揺れるのです。
そして、もっと根っこのところで気づいたことがあります。AIには、責任を取ってもらえない、ということです。どの案でいくかを決め、その結果を引き受けるのは、最後はこちらです。AIに「お前がそう言ったから」と責任を移すことはできません。だから、最後はやはり、これまでの経験と、お客さんの頭の中を思い浮かべながら、自分で決めるしかない。
考えてみれば、今回いい答えを引き出したのも、AIそのものではありませんでした。「量は本当に関係ないのか」と食い下がり、「お客さんはどう買うのか」と角度を変えて問い直したのは、自分のほうです。AIから深い答えを引き出すのは、結局のところ、こちらの問いの質でした。便利な道具が増えても、何を問い、最後に何を選ぶかは、手放してはいけない。AIに勝ち方を聞きにいって、最後に残ったのは、そういう静かな確認でした。
検索順位だけでなく、AIと人の頭の中にポジションを作る。











